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超短編小説 「不安の影」



 目を閉じると、いつもあの音が聞こえる。遠くから近づいてくるような、微かな足音。しかし、部屋の中はひどく静かで、何も見えない。まるで誰かが近くにいるようで、そしてその存在が自分を見ているようで、息を呑んだ瞬間にまたその音が聞こえた。部屋の隅に何かがいるのだろうか。足音が消え、代わりに冷たい風が窓から吹き込んでくる。しかし、確かに聞いたのだ。誰かが、何かが、ここにいたのだ。

 自分がここにいる意味を考えると、不安が心を締めつける。なぜ、ただ座っているのか。なぜ、この場所にいるのか。ふと見ると、机の上には使い古された時計が置かれている。針がゆっくり、しかし確実に進んでいく。その刻まれる時の中で、私はただ不安だけを感じていた。

 そして、今度はその不安が実体を持ち、部屋の中に広がる。壁に映る自分の影が、少しずつ大きくなり、何かに飲み込まれるような感覚がした。触れることのできる存在が、自分のすぐ近くに迫っている気がして、身体が硬直する。

 しかし、目を開けると、何もなかった。静かな部屋に戻っていた。だが、もう一度閉じると、足音はまた聞こえてきたのだ。

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