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超短編小説 「健康」



 男は朝食のトーストをかじりながら、自分が健康になったことを知った。突然だった。昨日までの鈍い痛みも、重たいまぶたも、すっかり消えている。歯は滑らかに噛み合い、胃は何ひとつ文句を言わない。完璧な健康。

 しかし、奇妙なことに、男の指先はわずかに透けていた。最初は気のせいかと思ったが、時間が経つにつれ、それは肘へ、肩へと広がっていく。健康が満ちるほどに、体は薄れていった。

 洗面台の鏡を覗くと、男の顔はぼんやりと滲み、ガラスの向こう側に漂う影のようだった。健康とは、肉体の存在と引き換えに得られるものなのか?

 昼になる頃には、男の姿は完全に消えていた。皿の上には、かじりかけのトーストだけが残されていた。

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